身近にある材料で作る





材を作る

紀州の山に入って木を選ぶ





熊野の山は子供の頃から良く遊んでいたので始めてではないが林業家の森に踏み入るのは始めて。少々曇り気味だが休日に建築主さんのお子さんも参加されてピクニック気分になる。紀州の木で家を作る協同組合の榎本さんの車に乗せて貰って約一時間で田辺市に着く。軽い昼食を戴きながら今回お世話になる広本林業の広本さんと合流。切り株の年輪の巾で生育状況が判ること、育つ場所で木の性状が変わる話や、それを生かす使い方などを聞きながら葉枯らし状態の木を見る。森で気に入った木を選んで製材して使えるということで、大人達は真剣になる。そのそばで子供達は珍しい昆虫を見つけて我々に見せてくれた。熊野の森は懐が深い。
「自然素材を使って建てたい」という要望で始まった作業だが、このツアーは無垢の木の性状を身近に知る良い機会となった。「ムクの木」は我々の日常からすっかり離れてしまっているということなのだろう。木は伸縮する。干割れの現象がある。乾燥に時間が必要である。コンクリートや鉄と違い、木は生身の植物である。その厄介さ、面白み。そういったことを肌身で感じられた。
斯くして建築主さんにはご足労をお掛けしたが、立ち上がった家の生い立ちを知るというのは長いつきあいでは貴重かもしれない。家の柱や梁を眺めて、「あの山から来たんだなあ。」と想い出せるなどそうそうあることではない気がする。


選んだ木を製材する


製材された床材用の木が自然乾燥されているところ。人工乾燥用の炉も見せて貰う。出来るかぎり自然乾燥材を使いたいと考えている。材料の乾燥程度と加工方法は綿密に絡み合っており、大工の刻みによる伝統的な仕口を使うには本来自然乾燥が相応しいと考える。今回は在来工法において金物と伝統工法を使い分けており、榎本さんに紀州の材を調整して入れて貰った。生の木を乾燥してその現場に合わせて作っていく「乾燥」も職人技と知る。材木調達:紀州の木で家を造る協同組合


製材を大工が刻む。黒江の白樫棟梁による。

加工場にて。

竿継ぎ車知栓。


建て方

午後

組みあがっていく様子

大工の刻み場で綿密に刻まれた材料は手際よく組み立てられていく。プレファブ(先立って加工する)工法は日本古来からあったのだ。今回、全て手加工というアナクロニズムではなく、機械に任せられるところは使用した。大工が木の性状を読み、材を見立て、墨付け、竿シャチなどの必要な仕口加工を手で行うのである。このやり方の妥当性は後にも確認した。伝統的な木の技術を現代に合理的に生かしたいのである。一本一本木の性状を読み生かすことは大工の技術である。
一点物の自由度を確保しつつプレ加工して生産性を上げる大工の生産技術。気になるのは手刻みの腕が生かせる現場が減っており、加工場を持つ棟梁が極端に減っている現状だ。大工手刻みの選択肢がなくなる日が来れば日本の高度な木造文化は明治以来発展することなく、西欧の木造文化に取って代わられてしまう日が来るだろう。今この事態は日本の中でもっと考慮されるべきだと思う。

伝統的な仕口が家の内部で実際に露出する。


「大安」の赤い文字が眩しい。



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